第18回 飛騨市古川町大野町内
- 開催日
- 2013年6月16日
- 参加者数:
- 34名
過去最大規模づくしのお手入れお助け隊!
築140年以上、地元名士の旧家だった立派な古民家が20年近く放置されたまま空き家になっていました。敷地は二千四百平方メートルにも及び、1階だけでも大小16の部屋数を誇ります。この旧家は、明治3年築の木造2階建てで、土間や囲炉裏、カマド、使用人部屋も昔のまま残っています。別棟には茶室もあり、土蔵も3棟あります。驚くべきは、敷地内には水路まであり、水がきれいな為かシジミが生息し、鯉が悠々と泳いでいる光景を目にすることができます。この立派な古民家がただ朽ちていくのを黙って見ていられなかった地元の住民数名が一念発起し、自腹で買い取ることを決意されました。「70歳を超えた男のロマンとして、活用できる基盤を自分たちで築き上げたい。その後は、若い世代に活用し守っていってもらいたい。」家主の熱意により、再びこの家が息を吹き返そうとしています。今春から本格的な改修を始められていますが、古民家の良さを活かし忠実に再現するため、伝統工法を用いて釘やボルトなどの金具は使わずに進められています。現在も引き続き改修中のこちらの家を、新たな家主と共にお手入れさせていただくことになりました。
お手入れお助け隊開催の告知を開始したところ、定員20名を大幅に超える方々からご応募いただきました。最終的には、過去最大の参加人数30名にまで及び、スタッフ一同嬉しい悲鳴でした。家の広さも過去最大規模でしたので、お手入れするところはいくらでもあります。今回は家主のご厚意により、前日入りされる方にはお部屋を提供していただいていましたので、素泊まりされる方も2名いらっしゃいました。夜は地酒を囲みながら、会話に花が咲いたのではないでしょうか。
蘇る古民家
家主さんからのご挨拶が済んだ後、いよいよお手入れ開始です。当日のお手入れ場所は1階部分と別棟の茶室、3棟あるうちの1棟の土蔵に絞って、県内外からお集まりいただいた30名を班分けするところから始まりました。参加者のうちの21名は初参加だったため、お助け隊常連さんには各班のリーダーをお任せし、各人、雑巾やバケツを持って担当場所へ移動。とにかく広いお家のため、猫の手も借りたいくらいです。
お天気に大変恵まれ、暑い日になりましたので、私達も流れ出る汗を拭きながらのお手入れとなりました。障子戸や板戸などは水拭きした後に日干しします。梁はもちろん、柱や板床、板戸など、空き家状態だった20年近くもの間は、恐らく水拭きさえもろくにされていなかったのではないでしょうか。ましてや、昔は当たり前のようにされていた荏の油や米ぬかを使ってのお手入れは一度もされていなかったはずです。人間が喉が乾いたら水を欲するように、木も同様、植物性の油分を吸って艶と輝きを取り戻すのを長年待ち望んでいるようにさえ見えました。水拭きしても、あっという間にバケツの水の色が変わってしまうので、何度も何度も汚れが取れるまで拭くのを繰り返します。
しばらく水拭きした後は、今度は米ぬかと荏の油を使って磨き上げていきます。当日、お子様を連れて参加してくださった方がいらしたのですが、あっという間にコツを掴んで、一生懸命柱を磨くその姿は大変頼もしく、本当にありがたかったです。バケツの水替えを率先してやってくれる子供たちにも、終始助けられました。しばらく経ってから玄関を入って家の中を一望したとき、おえ(ざしき)やでいの部屋で、お手入れ前と比べて見違えるように光輝く木材を目にして心底驚きました。木材に自然光が反射して、ようやく家が家らしく息を吹き返したみたいでそれは美しかったです。参加者の方々も、磨く作業は水拭き以上に力が入ったようでした。茶室班と土蔵班の皆さんの、休憩する時間を惜しんでまでのお手入れぶりにも心から感謝です。家主さんも、皆さんの熱心な様子に感激しておられました。
私達がお手入れしている間に、台所では調理班担当の地元のお母さん達約10名が昼食の準備に大忙しです。「ぜひ参加者の皆さんに釜戸で炊いたご飯を食べていただきたい」という家主さんのご厚意により、「嫁入りした頃は毎日釜戸でご飯を炊いていたものだ」というおばあちゃんの指導のもと、おにぎりにするためのお米10kgを釜戸で炊いてくださいました。そのお隣では野菜や豚肉を刻み、巨大鍋で豚汁をこしらえてくださいます。いい匂いが家中に立ち込めて、雑巾を握る手にますます力が入ると同時に、お腹の虫も黙っていられなくなってきました。お昼まで、一息!
家主を囲んでの昼食時間
待ちに待った昼食は、家主さんと囲炉裏を囲んで。豚汁や盛りだくさんのおかずの他に、朴葉の上に乗せられたおにぎりがひとりに3つも配られました。手作りごはんに舌鼓を打ちながら、隣合わせた参加者同士、会話が弾みます。遠方からは、東京・愛知・滋賀からご参加くださった方もおり、回を増すごとに新たな仲間が増えていくことに、改めて感謝の気持ちを感じずにはいられません。
お腹も満たされ参加者同士打ち解けはじめたところで、自己紹介タイム。古民家や歴史建造物が大好きだという人、学生時代に飛騨とご縁があり今回参加を決めた人、それぞれに思い入れがある方ばかりです。最後に、家主さんから家の歴史、購入に至るまでの経緯や心の動き、地域に対する思い、今後の活用についてまで、興味深いお話を聞かせていただきました。今回だけに終わらず、今後もこの場にいる誰かしらが継続的にお手入れや活用に関わっていけたらいいなと思いました。
参加者からのコメント
- お手入れお助け隊はこれまでに何度も参加しているが、今回は家の大きさに驚いた。今まで以上に大変だったが、やりがいも今まで以上だった。(40代 男性)
- 班のリーダーを命じられたので、いつも以上に責任を感じたが楽しくできた。素晴らしい古民家がひとつ救われて、嬉しく思う。(30代 男性)
- 古民具を取り扱っているので、家の意匠以外にも大変興味があった。囲炉裏やアマ、水屋など、趣のある道具がそのまま残っており、美しいと思った。(40代 男性)
- 私自身が今年から古民家に住むことになったので、お手入れ方法など知りたいと思って参加しました。(30代 女性)
- 学生時代にゆかりのあった飛騨で、地域の方と交流できたことは大変有意義だった。大袈裟かもしれませんが、今後のまちづくりの在り方を考える良いきっかけになった。実行力のある継続 的で自発的なまちづくりを計画するためには、今回のように自然発生的に集まった人々が中心となって、まちの活気を創出する策を考えた方が効果的だと実感した。次回もぜひ参加したい。(20代 男性)