第11回 高山市国府町瓜巣地区
- 開催日
- 2011年5月22日
- 参加者数:
- 13名
瓜巣地区でのお手入れお助け隊
今回のお手入れお助け隊は、古川町市街地から車で約20分程行ったところにある、緑豊かな美しい土地、高山市国府町瓜巣地区にて行われました。当日はあいにくの雨降りとなりましたが、参加者全員のやる気は失せません。お手入れさせていただくのは、移築後約80年経つという大きな古民家でした。
家主さんのお話によると、昭和7,8年頃に新築し5年経った、高山市三福寺あたりに建っていた家を購入し、その家を現在の瓜巣地区に移築されたそうです。当時は、荷車と馬車で柱や梁などの材を運んできたそうで、約2年がかりで飛騨の匠の棟梁2名と地元の協力者80名で家の移築作業を完了させたそうです。
棟梁は数ヵ月泊まり込みでの作業、地元住民は奉仕ですので、家主さんが皆にお酒や夕食をもてなしながらの生活となり、家主さんの負担も相当なものだったのではないでしょうか。
現在の家族は、80代のおじいさん、おばあさん、娘さんの3人だけです。7年程前までは、家族総出でくるみを使ったお手入れをされていたそうですが、お子様らが自立され3人住まいとなった今は、昔と同じように家のお手入れをするのは大変な重労働となり、出来なくなっているのが現状です。
昔は家の一、二階とも養蚕部屋として使用されており、けれど実際は使い勝手が悪く不便な個所も多かったため、20年程前に馬屋は応接間、お坊さん専用の小座敷はおじいさんの書斎、2階は子ども部屋などに増改築され、より住みやすい空間造りをされたそうです。間口10間×奥行6間の切妻構造の平入り民家の土間(玄関)を入ると、すぐに広いおえ(ざしき)があり、ここを中心に今回私達がお手入れする場所となりました。土路丑(土間付近に見られる丸太の表面を整えただけの太い梁化粧丸太)や板戸等の建具、材質と太さで家の評価をされるという玄関のまぐさに至るまで、まずは水拭きをします。
参加者の方々の手にも力が入ります。皆さん、熱心にお手入れに取り組んでいただき、きれいに絞った雑巾の供給が追いつかないほどでした。次に民家の構造で一番大切な大黒柱はクルミで磨き、柱や梁等は米ぬかを入れた布で柱を拭いていきます。最後に仕上げとして、荏の油(エゴマ油)を含ませた布で丁寧に磨きあげます。
心を込めて磨けば磨くほど、どんどん輝きを増していく様を目の当たりにし、家はまるで息を吹き返したかのように私達に答えてくれます。お手入れお助け隊として参加する醍醐味はここにあるといっても過言ではないでしょう。約3時間、皆さんのご協力のおかげでおえ(ざしき)は見違えるほどきれいに生まれ変わり、家主さんらご家族にも大変喜んでいただくことができました。
お昼は、家主さん御手製のトン汁を囲んでの昼食会となりました。少し甘めの味付けのトン汁は大変美味しく、おかわりをする参加者の方も大勢みえました。ごちそうさまでした!
昼食後、家主さんのご好意で2階にも上がらせていただきました。当時の養蚕の様子をあちこちに垣間見ることができ、参加者の方々も大変興味深そうに見学しておられました。
参加者からの感想
- 貴重な体験をさせていただきました。私自身、高山市で古民家に住んでおりますが、実際手入れをしようとすると、何をどうしていいのか分からない部分が多いです。今日経験できたことは、今後の我が家のお掃除にも大変役立ちそうです。(70代男性 高山市)
- 飛騨の土地は素晴らしいですね。住民の方々の街づくりに対する意識の高さに驚きました。子供達にもお助け隊の活動に参加してもらうと、いい経験になるのでは?(20代 女性 神奈川県)
- 私は家族と古民家に住んでいるのですが、今日は古民家の魅力を再認識されられました。一部をバリアフリーにして改築したのですが、大事にしていきたいと思います。(20代 女性 高山市)
- 小さい頃は、父に毎日柱を磨かされていたことを思い出します。飛騨の匠が継承されている古民家は是非残していきたい私達の財産ですね。記録としてもしっかり後世に残すことが急務だと思われます。(30代 男性 高山市)
- 祖父が豆湯を使って家の手入れをしていたことが思い出されます。私自身、民家の学校にて学ぶこと1年、土壁づくりなど体験しましたが、今日の体験も素晴らしく、参加できて大変良かったと思います。(女性 新潟県)
地域住民の方々の街づくりに対する意識が高いことは、今回参加された方々の心に強く印象に残ったようです。お手入れお助け隊に参加されたことで、皆さんそれぞれ自分の住まいに対しての愛着も増したようでした。
新潟から参加された方は、民家を磨くためにどうすればいいのかいつも疑問に思っていたそうですが、今回の参加で理解し、終了後「荏の油」を購入して帰られました。
家主のコメント
後日、娘さんから御礼のお手紙が届きました。
もう50年以上この家に住んでいますが、昔ほど良さを感じなくなってきていました。でも皆さんにこの家を見直してもらえた事により、再び愛着が湧いてきました。お一人、お一人のお力により、木々が生き生きと生き帰り、我が家が喜んでいるような気がします。ずっと大切に住んでいけたらと思います。素晴らしい方々に巡り合えたこと、感謝しております。〈一部抜粋〉
スタッフ一同、古民家お手入れお助け隊はこれからも大切に取り組んでいかなければならない活動だと再認識できた一日となりました。
皆さん、本当にお疲れさまでした!