第5回 飛騨市宮川町巣之内地区

開催日
2011年3月22日
参加者数:
8名

越中八尾風の古民家

5回目となる「飛騨民家のお手入れお助け隊」。今回は、飛騨市内の宮川地区でのお手入れです。

宮川地区は、飛騨市の中でも特に築50年をこえる古民家の割合が80%以上ととても高い地域です。そしてその特徴として挙げられるのが、すぐ隣の富山県は越中八尾の流れを汲んだ古民家が多く存在していることです。

越中八尾風の古民家は、飛騨市の他の地域の古民家と比べて天井が高く中二階があることで、実質3階建てになっています。建築当時はほとんどの家屋が富山地方に多くみられる瓦葺きでしたが、近年では積雪対策の為亜鉛葺きに葺き替えることが多いそうです。また、妻側にも独特の化粧がみられ、太い梁が3本妻側の外に張り出しています。

今回のお手入れ対象のお宅も、越中八尾風の古民家です。家屋に使用されている主な素材はケヤキ。建築当時はかなりの贅沢な素材であったケヤキがふんだんに使われ、長い年月を経てなお輝きを増す美しい木目が家主の自慢です。

作業開始

これまでのお手入れにはなく高い天井には、特別な足場を用意してお手入れに臨みます。一見きれいなように見える天井の梁も、家主の高齢化や家族構成の現代化によりお手入れの担い手がいなくなったことで薄らと埃が積り少しだけ曇ったような色になっています。

今回も参加して頂いた若い大工さんと今回初参加のベテラン大工さんのボランティアスタッフが慣れた手つきで大きな足場を回しながら太い梁の隅から隅まで磨いていきます。少しづつ磨きあげるごとにその美しさに見とれる2人。大工さんならではの素材に対する目線には、彼等の年代こえた共通の思いがあるようです。

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お手入れは土間の部分とおえ・おえに面する縁側の部分の床や柱・梁の部分を午前中いっぱい時間をかけて行いました。今回参加して頂いた女性は、ご実家が同じ宮川地区の同年代の古民家だそうで、なかなか手が回らない古民家ならではのお手入れの方法などを勉強する目的でいらしたそうです。単に「古民家が好き」・「古民家のお手伝いをしたい」という方々にもそうなのですが、今回の女性のような「古民家のお手入れを勉強して実生活にも活かしたい」という方の為にも、ただお手入れをするだけでなく、お手入れの方法や理屈などを少しの時間でもレクチャーする時間も必要なのかもしれません。このお手入れお助け隊に何度も参加して頂けるリピーターを確保するのと同時に、たった一度の参加でも、ある程度は自分でお手入れができるノウハウ身に付けた参加者を育成することも大事だ思います。

作業後 / まとめ

今回のお手入れお助け隊のクライマックスは、お昼の食事の時間でした。

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内容はこれまでと同様におにぎりと豚汁です。頂く前には家主さんの挨拶がありました。その挨拶の中で、家主さんが家の歴史を語ります。事前に古民家の調査を行った際にはしどろもどろで家の建築年代なども聞きかじったことだけをおっしゃっていた家主さんは、今回のお助け隊がお手入れにやってくることで家の資料を洗い直し、家の歴史や素材の希少さを誇らしげに胸を張って語ります。その笑顔にはなかなかお手入れができないながらも、この古民家の家主としてのプライドが感じられました。最後におっしゃっていた「こんな機会でもなければ、皆さんにお会いすることも叶わず、自分の家の歴史さえ知る機会がありませんでした」というお言葉が印象的でした。

その後、ご飯を食べながら参加者の間で古民家を取り巻く数々の問題について白熱した議論が飛び交いました。その中でも特に鋭く熱い意見をおっしゃるのは、第1回のお助け隊で参加して頂いた、ご自身も移築した古民家に住む男性です。過疎集落の現実やら、行政や法律の古民家との関わり方の曖昧さなど、頭の痛くなるような問題の中で、古民家に対する熱い思いや、実際に古民家を移築した時の思い出・移築後のさまざまな出来事などを嬉し楽しそうに語る彼の姿に、参加者全員がこれからも前向きに古民家に向き合っていこうと決意を新たにしました。