第1回 飛騨市河合町有家地区
- 開催日
- 2009年11月8日
- 参加者数:
- 11名
初めてのお手入れお助け隊
第1回目にも関わらず、私共プロジェクトのスタッフと合わせ、お助け隊員は総勢11名のメンバーに。新聞やインターネットでの告知を通じ、飛騨市・高山市の他、神奈川・横浜や岐阜方面からもご参加いただきました。
集合場所にて自己紹介と簡単なミーティングを行ってから、お手入れ対象のお宅へ。築90年以上、室内を改装するお宅も多い中、建築当時のままの間取りをほとんど残した立派なお宅です。ご主人にご挨拶をし、屋内班、玄関班、土蔵班の3つのグループに分かれて作業を開始しました。
屋内班は「おおま」、あるいは「おえ」「あがりたて」と呼ばれる、玄関を入ってすぐの広い板の間を担当。床板と壁面、立派な柱や梁の手入れを行いました。ややくすんでしまっている梁や柱ですが、その奥に美しい光沢を潜めていることが一見して分かります。
固く絞った雑巾で水拭き開始。天井が高いため、上の方は脚立二つを並べたところに足場板を二枚重ねで渡し、その上に立っての作業。高所担当、それに雑巾を絞ってて渡す担当、床板担当などを、みんなで分担して行いました。時にお家の方との雑談をしながら、のんびりと。
玄関班は「走り込み」と「まぐさ」、玄関の扉、馬屋跡の扉を担当。南に向いた玄関先の木材は乾燥して劣化が進み、ところどころささくれ立っています。隊員の方の指摘で気が付いたのですが、同じ柱でも、陽に当たっている箇所と当たっていない箇所では傷み方が随分違いました。また、走り込みの内部はツバメが巣をかけるのに絶好の場所なので、立派な「まぐさ」も、フンで汚れてしまっていました。
泥や埃を掃き落としてから水拭きをします。雑巾の絞り方は屋内と比べるとややゆるめ。「走り込み」にはべんがらが塗られていました。色が薄れてしまわないよう、また土壁を傷つけないよう、慎重に拭き取りました。
土蔵はスタッフの一人が担当。土蔵の一階と中扉をお手入れしました。中扉には緑色の苔がびっしり付いていたのですが、千本格子の隙間に入り込んだそれらを拭き取るのにはなかなか手間がかかりました。
土蔵の中扉には閂が仕込まれていて、閉め切ると閂が落ちて扉が開かなくなります。今でいうオートロック式ドアですが、閂を外せるのは反対に外側からのみ。蔵に忍び込んだ泥棒を閉じ込められるような工夫です。案の定といいますか、スタッフがうっかり蔵の中から扉を閉めてしまったために閉じ込められ、ご主人に救け出される一幕も。
天然素材で磨き上げ
各班とも、およそ1時間程度で水拭きは完了しました。水気がある程度飛ぶのを待つため一旦休憩を取り、頃合いを見てトラックの荷台からクルミと粉ぬか(米ぬか)、そして荏の油(えのあぶら)を取り出します。
クルミや粉ぬかは、スタッフの家で不要になったシーツを縫って作った布袋に入れ、荏の油は鍋に移し火にかけ少し温めてから布に付けます(温めることで油の伸びが良くなるそうです)。
今回はこれら3種類の素材を使って、磨き上げの作業に入ります。
梁と柱とまぐさにはクルミ、床板や框には米ぬか、玄関先には荏の油と、場所によって素材を使い分けました。クルミを入れた袋は握り拳のサイズ、粉ぬかを入れた袋は枕のサイズに絞ってごしごし磨きます。
クルミや米ぬかは、はじめは変化が分かりにくいのですが、ギュッギュと磨いていると徐々に中から油が染み出してきて、磨いた部分にツヤが蘇っていきます。
荏の油で磨いた場所は、磨いてすぐは多少油くささが漂ったのですが、しばらくすると徐々に酸化するためか、何ともいえないいい香りに変わりました。
さすがに磨き上げには水拭きよりも多くの時間を要しました。特にクルミと粉ぬかは、油が染み出すまでに苦労しましたが、それでも隊員の皆さんの奮闘のおかげで、2時間程で完了です。年に数回の頻度とはいえ、この規模のお家全体をたとえば一人で磨き上げようとすると、やはり大変だろうなと思います。
仕上がりの美しさには、誰もが満足げ。縁側から差し込む光が磨いた板の間に映えます。板の間に座して感慨深げに室内を眺める隊員の姿が印象的でした。
お昼ご飯
正午は過ぎてしまいましたが、予定より早く作業が終わり、大間で昼食をとることに。奥さんと地元在住のスタッフにおにぎりと豚汁の準備をして頂きました。
「大間」の囲炉裏で炭火をおこしての昼食。なんと、サプライズで天然イワナの塩焼きと、手造りの五平餅まで用意してくださいました。ちょっと申し訳ない気持ちもしましたが、人をもてなす心は、飛騨の人の美点だなぁと感激しつつ、どれもこれも美味しく頂きました。
普段はなかなか味合うことのできない贅沢です。
第1回のまとめ
陽が高くなると数日前には雪が降り積もっていたなんて信じられないほど暖かい陽気に包まれ、お手入れ作業には絶好の一日でした。
旧来の民家に惜しげもなく使われている素晴らしい木材たちは、今回のような短時間のお手入れであってもすぐに応えてくれ、ダイヤの原石のように磨けば光ることを実感できました。しかし、長年放置されたことで傷んでしまった部分を元通りに戻すことは出来ません。表面を軽く擦るだけで粉のように繊維がほぐれてしまう箇所もありました。
こうした民家が、後世に継承していくべき大切な財産であることを再認識すると共に、末永く守っていく上では、継続的なお手入れが不可欠であると感じました。
ほとんどの行程においてスムーズに作業を進めることができ、私たちにとっても楽しめるイベントになりました。いくつか改善したい点も見つかりましたので、次回に向けてしっかり準備をし、さらに充実したイベントにしていければと思っています。
快く受け入れてくださったご家族の皆様、どんなイベントになるかも分からないのに早朝からご参加いただいた隊員の皆さん、ありがとうございました! 隊員の皆さんには是非次回以降のお助け隊にも参加して頂ければ大変心強いです。ということで最後に記念写真を1枚。